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2021 年09 月29 日掲載:

【SSCボランティアインタビュー②】生活・医療相談 渡邊貴博さん

ささしまサポートセンターには、年齢も職業もさまざまな方がそれぞれの関心やご都合に応じて活動に関わっているボランティアの方がたくさんいらっしゃいます。
そんな方々にお話をうかがいました。今回は主に毎週木曜夜の炊き出し会場での生活医療相談のメンバーとして活動する、精神科医の渡邊貴博さんです。

インタビュアーは日本福祉大学の「在学ギャップイヤープログラム」の一環としてささしまサポートセンターで活動していただいている、松本大樹さんです。(事務局・石黒)

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皆さんこんにちは!日本福祉大学社会福祉学部3年生の松本大樹です。
今回はささしまサポートセンターの理事もされている精神科医の渡邉先生にインタビューをさせていただきました。
その内容をまとめさせていただきましたのでぜひご覧ください。(以下:渡邉先生→渡、松本→松)


松:「日本の精神医療は遅れている」と耳にすることがあります。どういうことでしょうか?
渡:精神科病院のベッド数を減らして、精神疾患がある人も地域で暮らせるようにする、という、海外では当たり前になりつつあることが日本ではまだほとんどできていないという面はあるね。ホームレス支援でもよく言われる「ハウジングファースト」という施策もなかなか進まない。日本はコロナの対策もそうだけど、外国の経験から積極的に学ぼうという姿勢が足りないのではないかと思うことがいろいろあるね。

松:刑務所から出られた精神障害のある方の受け入れ先もなかなか無いと聞きました。
渡:受け入れ先が無いから精神病院に入院するか、また罪を犯して刑務所に入ってしまうか、どこにも行けずに路上で暮らすしかないという状況に追い込まれる人が少なくないと思うよ。

松:受け入れ先は増えていくと思いますか?
渡:障害者のグループホームをどんどん作るという政策誘導がなされているけど僕はあまり賛成できないかな。
日本の「ホームレス」の定義は狭いよね。例えばドイツの定義では、DVシェルターにいる人、無料低額宿泊所に望まず住んでいる人、グループホームに住んでいる人、精神科の病棟に社会的入院をしている人もみんな「ホームレス」ということになる。海外では精神科の病床を減らしていこうという動きがあると言ったけれど、海外はその病床にグループホームも含めている。つまり、グループホームも含めて減らし、地域で当たり前に暮らせる社会を作ろうとしている。ノーマライゼーションの考え方だね。日本は何でも専門的な施設へという考え方が根強いと思う。精神科がその筆頭だけれど、障害や属性別に特別な施設を作るばかりでは、どこまでいっても足らないよね。

松:そういった状況を変えていくには何が必要になるのでしょうか?
渡:人権意識の高まりが必要だと思う。困ったことがあったら精神病床や施設に押し込める、隔離収容という考え方が日本には根強くある。
今の日本でも「人が商品としての価値がないなら生きていく意味がない」と堂々と言う人がいたりするよね。そのために苦しんでいる人が多いのだと思う。引きこもりはその最たるものだよね、そういう価値観の中で上手くいかなかったり、疑問を感じて社会とのつながりを持てないでいる。いじめられた経験がある子も多いけど、いじめが多いのも子どもたちにも同じような価値観が伝播しているということじゃないかな。人と合わせられないとか、「生産性が無い」とされるような子にいじめが集中するわけだから。
働けるとか、お金が稼げることがえらいという考えに支配されすぎているんだね。そうではなくて、どんな人にも人権があるということを正面から掲げていく社会を作ること。それが、今生きづらい思いをしている人はもちろん、そうでない人たちにとってもより良い社会になると思うよ。

今回、渡邉先生とお話しをさせていただくことで様々なことを考え、そして新たな学びに繋がりました。渡邉先生は日本社会の困難を生みだしている「根源」を見つめていらっしゃるのだと感じます。それを受けて「困難の原因はどこにあるのか」ということを知っていくことが変化をもたらしていく一歩になるのではないかと改めて思いました。「まずは自分から」という思いを持って社会の変化に繋げていきたいと感じました。

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